私が所属する日本心療内科学会は、呼吸器心身医学研究会と
してスタートしました。主に難治性の喘息を対象に、ストレス
との関係を研究し、心理療法やカウンセリングを組み合わせて
改善を図りました。
現在のような抗体医薬品はなく、ステロイド吸入療法さえも
行われていない時代ですから、喘息死を如何にして減らすかが
大きな課題だったわけです。
カウンセリングや心理療法は、専門的な技術を必要としますし
時間もかかります。それでも、丁寧に時間をかけただけ必要な
薬を減らせたと報告し、心療内科の確立に役立ちました。
私の尊敬する吾郷2代目理事長は「本当に喘息を治せるのは
吾郷先生だけだ」と言われるほど心身医学的治療が上手かった
ようです。私も個人的に教えて頂き、今でも参考にしています。
漢方薬も恩師から「やたらと増やすな」「増やすと何が
効いたかわからない」と教わり、必要かつ最小限のシンプルな
スタイルが出来上がりました。メーカー主催の勉強会で講師が
何種類も薬を使ったことを報告しますが、「本当に必要な薬は
どれ?」と考えてしまいます。
話を戻します。喘息の病態には、いくつかのサイトカインが
関係します。ダニやほこりなどが抗原となりサイトカインが
産生され、気道で炎症が起こり喘息を発症します。この炎症を
ステロイド吸入で抑えているのが現在の治療法です。
そして、どうやらストレスも条件によってはサイトカインの
産生に関与しているようです。それだけでなく腸内細菌叢や
内臓脂肪なども関与して、非常に複雑な状況が体内で起きて
いるようです。
ですから、病的なサイトカインをコントロールすることは
喘息を安定させるため非常に重要で、1か月に数万円かかる
抗体医薬品が難治例では使用されるわけです。
ストレス対策(ストレスコーピング)は、高価な抗体医薬品を
使わずにサイトカインをコントロールできるかもしれません。
また、いくつかの漢方薬にもストレス軽減効果が確認され、
心身医学的対応と合わせ、相乗効果が期待できます。
最近の傾向として、ストレスがあると安易に抗うつ薬や
抗不安薬が使用されています。視点は大事ですが、何か違う
ように感じてしまいます。心療内科スタート時の一つの原点
「薬を減らす」方向とは真逆ですから。
近年増加している自己免疫疾患も、サイトカインが関係
しますし、元をたどればストレスが浮かび上がります。
ストレス対策がもっと注目されてもいいように感じます。
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薬剤師・公認心理師・スクールカウンセラー 廣橋 義和
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